「ネイティブじゃないと意味がない?」──その思い込みが子どもの可能性を狭めていないか

こんにちは。桐谷です。

お子さんの英語学習に取り組むなかで、
こんな思いを抱いたことはありませんか?

「やっぱりネイティブの先生に習わせた方がいいのかな…」
「発音がきれいじゃないと、将来通用しない?」
「自分の英語じゃ、子どもに教える意味ないかも…」

そんなふうに思ってしまうのは、決して不思議なことではありません。
私たち親世代は長年、「ネイティブこそ正しい」「ネイティブこそ理想」とされる価値観の中で育ってきました
だからこそ、自分の英語に自信を持てなかったり、子どもにちゃんとした英語を与えなきゃとプレッシャーを感じたりするのも、自然な反応だと思うのです。

でも、ここで改めて考えてみたいのです。

「ネイティブじゃないと意味がない」という思い込みが、
子どもの学びの可能性を、無意識のうちに狭めてしまってはいないだろうか。

子どもが英語を学ぶ上で本当に大切なのは、
完璧な発音や理想的な話し方ではなく、言葉を通して「伝えたい」という気持ちと、表現する勇気です。

その気持ちを育てていけるのは、
実は、毎日一番近くで声をかけているあなたの英語なのかもしれません。


世界で英語を話す「ネイティブ」は、ほんの一部

英語を母語とする人口は、世界でおよそ4億人。
一方で、英語を第二言語や共通語として使っている人の数は、実にその3倍以上にのぼると言われています。

つまり──
世界で英語を使っている大多数の人たちは、ネイティブではないのです。

インドのビジネスマンが、海外のクライアントと英語で商談を交わし、
スウェーデンの大学生が、留学生とディスカッションを行い、
フィリピンの観光ガイドが、世界各国の旅行者と英語で心を通わせ、
ドイツの研究者が、国際会議で成果を英語で発表する。

彼らが使っている英語は、決して完璧なネイティブ発音ではありません。
けれど、相手に伝わり、対話を生み、信頼を築く英語です。

世界の共通語としての英語は、「正しさ」ではなく、「つながる力」としての英語に進化しているのです。

英語は「完璧に話す」ためではなく、「伝える」ための道具

ネイティブのような発音。
ネイティブが使う表現。
ネイティブらしいイントネーション。

たしかに、それらは聞いていて心地よく、美しいものかもしれません。
でも、英語の本質は「ネイティブのように話すこと」ではありません。

英語とは、

  • 自分の考えや気持ちを、相手に伝えるためのことばであり、
  • 相手の言葉に、耳を傾け受け取るための手段であり、
  • 違う文化や価値観を持つ人と、対話するための橋のような存在です。

その根っこにあるのは、「正しさ」や「美しさ」ではなく、伝えたいという意志と、つながろうとする姿勢。

どれだけ文法が正しくても、どれだけ発音がきれいでも、
心がこもっていなければ、それは「ただの音」でしかありません。

逆に、たどたどしくても、自分の言葉で伝えようとする英語は、
相手の心にちゃんと届く力を持っています。


「ネイティブじゃないとダメ」という思い込みがもたらす3つの弊害

「ネイティブみたいに話さないと通じない」
「正しく話せないなら意味がない」

そんな思い込みが、知らず知らずのうちに、親子の英語との向き合い方にブレーキをかけてしまうことがあります。

ここでは、その思い込みがもたらす3つの影響を考えてみます。

間違うことを恐れるようになる

「間違ったら恥ずかしい」「ちゃんと言えなきゃダメ」
そう思い込むことで、子どもは英語を口にすること自体に不安を感じ、発話のチャンスを自ら手放してしまうことがあります。

英語は「“伝えようとするこ」”こそが大切。
でも、「ネイティブのように正しく話すべき」という圧がかかると、その大切な一歩が踏み出せなくなってしまいます。

英語が「自分とは無関係なもの」に感じられる

「自分の英語はダメだから…」
そんなふうに親が口にすると、子どもは敏感にその空気を受け取ります。
そしていつの間にか、「英語は特別な人が使うもので、自分とは無縁なもの」と感じてしまうようになってしまいます。

でも、英語は特別な誰かのための言語ではなく、誰もが使っていい、コミュニケーションの道具です。

親が完璧じゃなくても、楽しんで使っている姿そのものが、子どもにとって最大の安心と刺激になるのです。

英語を「真似する対象」としてしか見なくなる

ネイティブの言い回しや発音を正解としすぎると、
英語が「真似るだけのもの」になってしまう危険もあります。

その結果、英語が本来持っている
「感じる」「考える」「自分なりに使ってみる」という言葉の力を、育む機会が奪われてしまいます。

英語は、コピーするものではなく、育てていくもの。
その感覚を持てることが、子どもにとって何より大きな財産になります。


おうち英語だからこそ、ネイティブ信仰を手放せる

家庭での英語は、テストのためでも、完璧な発音のためでもありません。
だからこそ、いちばん大切にしたいのは、
「誰から学ぶか」ではなく、「どんな関わり方で英語が使われているか」

ネイティブのように話せなくても大丈夫。
むしろ

  • 親が英語で気持ちを伝えようとする姿
  • 子どもが言葉に詰まりながらも「伝えよう」とする瞬間
  • 発音の間違いを笑い合いながら、それでも会話を続けようとする空気

こうした imperfect(不完全)だけど genuine(本物)なやり取りこそが、
子どもにとって一番リアルで、力強い英語の体験になるのです。

おうち英語の良さは、「正しさ」ではなく「つながり」を育てられること。
だからこそ、ネイティブのようである必要なんて、どこにもないのです。


おうちで実践できる、「ネイティブ信仰」からやさしく離れるヒント

「ネイティブのように話さなきゃ」
「正しい英語を与えなきゃ」
そんなプレッシャーから少しずつ自由になっていくために、
今日から家庭でできる、小さなヒントをご紹介します。

「伝わった」ことを大切にする

“I hungry.” でもいい
“That book good.” でもいい

たとえ文法的に間違っていても、
「あなたの言いたいこと、ちゃんと伝わったよ」というフィードバックが、
子どもの中に「話していいんだ」という自信を育ててくれます

英語は、正しさの先にあるつながりの体験が、
子どもの心にもっとも深く残るのです。


親の英語も、堂々と使ってみる

「正しく言える自信がない」からと、黙ってしまうのではなく、
「完璧じゃなくても、私は英語を使ってみるよ」という姿勢を、日常の中で見せていきましょう。

子どもにとって、それは
「英語は間違えても大丈夫なんだ」という、最高に安心できるメッセージになります。

英語は、うまく話すことよりも、言ってみようとする勇気が、何より大切なのです。


世界には、さまざまな英語があることを伝える

ネイティブ英語だけが正しい英語ではないと、子どもが実感できる環境をつくりましょう。

  • さまざまな国の英語スピーカーの動画を見る
  • 世界の子どもたちが、それぞれの発音・表現で英語を使っている様子を見せる
  • 「伝える力」とは何かを、一緒に感じ取る

その中で子どもはきっと気づきます。
「正解の英語はひとつじゃない。
だから、自分の英語を大切に育てていけばいいんだ」と。


最後に

あなたのお子さんが目指す英語は、
「誰かの真似」でしょうか? それとも、「自分の言葉」でしょうか?

ネイティブのように話すことを目標にするのは、悪いことではありません。
でも、それだけが“正解”だと思い込んでしまったとき、
子どもたちの中にあるのびのびと話す勇気や、表現する楽しさは、
静かにしぼんでしまうかもしれません。

だからこそ、子供に何度も問いかけてみてください。
そして、その英語が、子供達自らの言葉なのか問いかけてあげてください。

もっと自由に。もっとのびやかに。
もっとその子らしい英語を育てていける学びへ

おうち英語は、そのための優しい土壌になれるはずです。