「受験のための英語」が、子どもの未来を奪うかもしれない理由──「評価される英語」と「使える英語」の間にある深い溝

こんにちは。桐谷です。

お子さんの英語教育に取り組んでいるお母さん。
日々の学びを見守る中で、こんなふうに思ったことはありませんか?

「受験にも必要だから、今のうちに英語力をつけておかなくちゃ」
「英検や模試の点数を見れば、英語力の成長もわかるはず」
「まずは受験。それが終わってから本当の英語を考えよう」

そのお気持ち、とてもよくわかります。
実際、今の日本の教育システムでは、「英語=受験科目」という認識が根強くありますし、
高校・大学進学を考えるうえで、避けては通れないのも事実です。

でも、ここで少しだけ、立ち止まって考えてみてほしいのです。

その「受験のための英語」は、
お子さんの未来につながる英語になっているでしょうか?

もし今の学び方が、将来本当に必要な力を知らず知らずのうちに奪ってしまっているとしたら・・・?


日本の英語教育は、いまだに「評価される英語」に縛られている

中学・高校の英語授業では、今もなお、多くの学校で以下のような学習が中心です:

  • 文法問題で正解を選ぶ
  • 長文読解で設問に答える
  • 英単語の意味を覚える
  • リスニングでは「正確に聞き取れたか」が重視される

これらはすべて、「テストで点を取るための英語」に最適化された学習です。

もちろん、文法や語彙、読解力といった基礎的なスキルの積み上げは不可欠です。

けれども、それだけで、
子どもたちは本当に「世界と対話できる英語」を手に入れられるのでしょうか?

相手の考えを聞き、自分の思いを伝え、
違いを受け入れながら対話を重ねる──

そのような生きた英語を育てるための機会が、今の教育の中にどれだけあるでしょうか?

試験の正解を覚えるだけでは、
言葉に自分を乗せて話す力までは、育ちにくいのです。


「点数の取れる英語」と「使える英語」は、まったく別のもの

英検準1級を持っている。
TOEICで800点以上を取っている。
それなのに──いざ外国人を前にすると、一言も言葉が出てこない。

そんな高校生や大学生に、実際に数多く出会ってきました。

なぜでしょうか?

  • 「自分の意見を言う練習」を、ほとんどしてこなかったから
  • 「正解を出すこと」ばかりが目標になっていたから
  • 「間違えないこと」が最も大事なことだと、無意識に刷り込まれていたから

その結果、自分の言葉で英語を使うという力が育たなかったのです。

いくら点が取れても、
いくら語彙が多くても、
それだけでは「伝える英語」「つながる英語」にはなりません。

「英語で正しく答える力」と、「英語で対話できる力」は、まったく別のもの。

そして今、求められているのは、後者の力です。
テストでは測れない、でも確実に人と人をつなぐ、生きた英語なのです。


「受験のための英語」が、子どもから何を奪っているのか?

受験英語が優先される今の教育の中で、
子どもたちは知らず知らずのうちに、大切な力を失っているかもしれません。

● 間違える勇気

「正解がすべて」という学び方は、
子どもの心に「間違ってはいけない」という恐れを強く植えつけます。

その結果──
英語を話すとき、間違いを恐れて口を閉ざしてしまう。

英語が表現の手段ではなく、正解を当てる競技になってしまうのです。


● 自由に表現する力

答えがあらかじめ決まっている問題ばかりに向き合っていると、
「自分の考えを持つこと」や「感じたことを言葉にする力」が育ちにくくなります。

そのまま成長すると──
自分の意見を英語で言うことに、自信が持てなくなってしまう可能性があります。


● 英語との心の距離

毎日「試験のための英語」を詰め込まれた子どもは、
やがてこう感じるようになります。

「英語って、つまらない」
「役に立つのはテストだけ」

そして、大人になったときには、
英語そのものを、手放してしまっているかもしれません。


「受験のための英語」から、「生きるための英語」へ

では、私たち親が今できることは、何でしょうか?

それは、家庭の中で「英語は表現のための道具」だと伝えていくこと。
試験の外にある生きた言葉を、子どもに届けていくことです。

たとえば──

  • 「今日の英語レッスン、どんなことを話したの?」と、内容に興味をもって聞いてあげる
  • 英語で日記を書いたり、気持ちを声に出してみる時間をつくる
  • 「君はどう思う?」「Why do you think so?」と、理由や気持ちを英語で表す習慣を育てる

子どもが自分の英語を育てていくために必要なのは、
スコアや正解ではありません。

「言葉を使って、自分を表現する体験」こそが、未来につながる英語力の根になるのです


親の言葉が、子どもの英語を「受験英語」から解き放つ

「頑張ってね!良い点取れると良いね!」
子どもがテストに向け自ら頑張った時には、そんな励ましも必要だと思います。
けれども、気を付けなくてはいけないことは、点数や成果だけを重視しないということ
英語がいつの間にか評価されるものにならないよう、家庭での声掛けが大切になってきます。

では一体どうすればよいのか?
代わりに、こんな声かけはいかがでしょうか。

「今日、自分の言葉で話そうとしてたね。すごいじゃん。」
「一生懸命伝えようとしてたね!そういうの、いいと思う!」
「英語って、世界や考え方を広げる力になるね!」

そんなふうに努力したプロセスや気持ちを伝えようとする姿勢に目を向ける言葉は、
子どもの中に「英語は試されるものじゃなくて、使うためのものなんだ」という感覚を自然と育てていきます。

英語を「得点のための手段」にしない。
子どもの中に、自分のことばとして英語を育てていくために、
私たちができる一番のサポートは、どんな視点で声をかけるかにあるのかもしれません


最後に、もう一度聞かせてください。

あなたのお子さんが今、学んでいる英語は──
「受験のため」ですか? それとも、「未来のため」ですか?

受験英語を完全に否定する必要はありません。
基礎を固める意味でも、時に目標として機能することもあるでしょう。

けれど、それだけにすべてを預けてしまうのは、危ういと思います。

英語は、点を取るものではなく、自分の声を世界に届ける道具です。

そのことに気づいた瞬間、
英語の学びは「義務」から「力」へと変わっていきます。

子どもが自分の言葉で誰かとつながる未来のために──
今、私たち大人の視点も、静かにシフトしていけたらと思うのです。